研究会活動
第20回研究会「インタープリテーション全体計画から国立公園の利用・体験を考える」【2025年3月21日(金)】
各国立公園や世界遺産地域では、インタープリテーション全体計画等(ステップアッププログラム、自然体験活動促進計画等を含む)の作成が進められています。今回の自然公園研究会では、インタープリテーション全体計画と既計画との位置づけやインタープリテーション全体計画・計画設定の意図を整理します。さらに、海外の国立公園におけるインタープリテーションの状況や国内のインタプリ―テーション全体計画の策定事例を通じて、国立公園を始めとした自然地域にインタープリテーション全体計画を導入することで期待される意図や効果について議論します。

話題提供1「インタープリテーション計画が目指すもの」

中原一成 氏(環境省 自然環境局国立公園課国立公園利用推進室 室長補佐)

 環境省は、国立公園満喫プロジェクトの一環として「保護と利用の好循環」を目指しており、インタープリテーション計画はその基盤を形成する重要な要素と位置づけられている。この計画は、来訪者が自然や文化に対して知的・感情的なつながりを持つ機会を提供し、行動変容を促すことを目的とした教育的活動を含めた計画である。
 具体的な計画策定においては、ビジョン、伝えたい価値、対象となる利用者像、望ましい体験、情報発信の方法や場所などを明確にし、それを地域の関係者とともに共有・構築していくことが求められる。こうしたプロセスは、単なる情報提供を超えた「物語の共有」を可能とし、地域の誇りやホスピタリティの向上、観光価値の強化にもつながる。計画は名称や形式にとらわれず、コミュニケーション戦略や地域のブランディング計画として展開されることもある。
 また、国立公園のブランドメッセージ「その自然には、物語がある。」を決定し、「多様な自然風景と、生活・文化・歴史が凝縮された物語を知ることで、忘れられない唯一無二の感動や体験ができる。」という提供価値を位置づけている。ブランドメッセージと提供価値に基づいて、国立公園が来訪者・地域に約束する4つのブランドプロミス(感動的な自然風景、サステナビリティへの共感、自然と人々の物語を知るアクティビティ、感動体験を支える施設とサービス)と、ブランドプロミスを実現し続けるため、環境省が地域・関係者と一緒に取り組む9つのブランディング活動を定めている。インタープリテーション計画は、このブランドプロミスの実践手段の一つとして機能し、地域の多様なステークホルダーとの連携によって、具体的な活動や施設整備などにも影響を与えるものである。
 さらに、インタープリテーション計画は非法定計画であり、策定プロセスの短縮化、柔軟な見直しのしやすさを実現しやすい。合意形成プロセスを通じてネットワークが形成され、ビジョンの共有や新たなプロジェクトの創出といった相乗効果も期待される。ワークショップなどを活用した参加型の会議は、関係者の能動性を引き出し、より活発な議論と連携を生み出している。
 計画が実現すれば、パンフレットやサイン、ウェブサイトなどの情報発信の統一、自然体験プログラムの質の向上、地域全体で価値を伝える体制の構築など、具体的な効果が期待できる。インタープリテーション計画は、地域の声を活かしながら進めるボトムアップ型の取り組みであり、計画内容だけでなく、その策定プロセスが極めて重要である。関係者が主体的に関わりながら、地域の特性を活かした魅力的な自然体験の提供を目指すものとなっている。


話題提供2「那須エリアにおけるインタープリテーション全体計画の策定」

山﨑和幸 氏(栃木アウトドア事業振興会 BERGTOAD)

 那須エリアでは、インタープリテーション全体計画の策定が地域主体で進められた。計画策定の発端は、環境省や観光協会からの「あるとよい」との声であり、当初は自然体験活動促進計画の作成を予定していたが、インタープリテーション全体計画の存在を知ったことで、まずはそちらを優先することとなった。インタープリテーション全体計画は地域の人々が使うものであるという認識から、地域住民が主体となり、その中で民間事業者がリードするような形で進めることにした。地域ではこれまでにも多くのワークショップが開催されてきたが、今回は「最終決定版を作る」という強い意志で臨み、地域住民の巻き込みを図った。完成した冊子は、表紙のデザインも含めて民間事業者ならではの個性が表れており、賛否を呼ぶものではあるが、話題性があり、考えるきっかけとなればと考えている。
 那須インタープリテーション全体計画は、「来訪者が体験を通じて地域を深く理解し、共感できるようにするための中心的な概念」というテーマのもと、「自然の圧倒的なポテンシャル①:火山の物語」「自然の圧倒的なポテンシャル②:水の物語」「暮らしと風土を生み、歴史を紡いできた人のポテンシャル:人の物語」「皇室が愛し地域からも愛された那須のポテンシャル:御用邸の物語」の4つのカテゴリーに16のテーマをまとめ、それらすべてを内包する那須のメインテーマを据えた構成となっている。この構成に至るまでのプロセスは容易ではなく、地域資源の洗い出しや体験の掘り起こしなどを重ね、ワークショップ形式で進めた。しかし「インタープリテーション」という言葉自体が一般にはなじみがなく、伝わりづらかったという反省もある。住民には「観光マップづくり」のように受け取られる場面も多く、的確な説明の必要性を感じた。冊子のタイトルも議論があるが、「那須を大好きになるストーリー集」とし、住民にとって親しみやすい切り口を採用した。インタープリテーションの定義は冊子の最後に配置し、段階的に理解を促す構成とした。これは、巻き込みを優先した手法であり、手探りではあるが地域にとって有効なアプローチと考えている。
 この計画策定で最も価値があったのはプロセスである。住民が議論に参加する中で地域への愛着が育まれ、知識や視点も変化し、住民間の交流も促進された。さらに、ワークショップを通じて住民の主体性や意欲も高まり、事務局と同等の役割を果たす「那須IP(インタープリテーション)チーム」が誕生した。このチームは単なるボランティアではなく、計画策定や活用を担う核として機能しており、今後は計画をもとにツアーや商品開発を通じた収益化・自立も視野に入れて取り組んでいる。
 この計画づくりは地域にとって非常に意義深く、単なる冊子作成を超えて、地域住民の連携や意識の変化、新たなチームの形成へとつながった。今後もこの動きを持続可能なものとするため、継続的な取り組みを進めていきたいと思っている。


話題提供3「白神山地インタープリテーション全体計画について」

佐々木吉昭 氏(環白神エコツーリズム推進協議会 事務局次長)

 白神山地は、世界自然遺産でありながら、国内における他の世界自然遺産4地域とは異なり国立公園に指定されておらず、利活用推進に関して30年間課題が解決されていない状況である。白神山地インタープリテーション全体計画策定にかかるプロジェクトは、そのような背景から、広域での利活用とエコツーリズムの推進を目指して取り組んでいる。
 白神山地は本州唯一の世界自然遺産であり、保全状態は良好と評価されている一方、観光利用は低調であり、アクセスの不安定さや林道整備の財源確保も課題となっている。特に自然環境保全地域へのアクセスが制限されているため、周辺地域の利活用が重要であるにもかかわらず、担当者の異動などもあり、一貫した取り組みが進まないという問題を抱えている。
 環白神エコツーリズム推進協議会では、官民の交流を重視し、合宿形式の勉強会や白神検定の開発を進めてきた。また、世界自然遺産一周サイクルルートの構想も3年前からスタートし、インタープリテーション全体計画とも連動して地域資源の見える化を目指しているところである。保全とビジネスの両立を図る循環型エコツーリズムの理解も深まりつつある。
 インタープリテーション全体計画においては、地域の思いをメッセージ化し、意義・価値・哲学の共有を図ることが重要だと認識している。ただし、議論の時間や回数が不足しており、各分野への深掘りができていない現状がある。加えて、未参加者への情報共有がも課題である。今後は、より丁寧な説明と議論を積み重ね、理解と共感を広げていく必要があると考えている。また、川筋ごとの文化的背景の違いや県境を越えた歴史的経緯にも配慮した地域づくりを目指し、アーカイブツールを整備して、経緯や議論を可視化していく計画である。ストーリーを伝えるためには、デザインの力も必要であり、心を打つメッセージ性を伴った発信にも注力したいと考えている。今後3年間では、インタープリテーション全体計画を通じて白神山地の可能性を最大限に引き出し、「踊りたくなる、手をつなぎたくなる」ような魅力的なデザインの実装を目指している。
 しかしながら、現状は限られた資金でプロジェクトを運営しており、持続可能な中間支援体制の構築が喫緊の課題である。広域かつ多様な文化背景を持つ地域であるからこそ、丁寧な対話と共創の姿勢が重要であり、引き続き試行錯誤を重ねながら取り組みを進めていきたい。


話題提供4「海外の国立公園におけるインタープリテーション」

海津ゆりえ 氏(文教大学 国際学部国際観光学科 教授)

 エコツーリズムは1960年代以降、観光が自然環境のみならず地域文化や経済社会にも悪影響を及ぼすという認識の高まりの中で生まれた概念である。1972年の国連ストックホルム会議に象徴されるように、この時期から環境と人類の関係改善への関心が高まり、1980年にはIUCN、UNEP、WWFが「持続可能な方法」を明文化した。1983年、メキシコ人建築家ラスクラインが「エコロジカル」と「ツーリズム」を結び付けた「エコツーリズム」の概念を提唱し、1990年前後には、IUCNが健全な観光の必要性を認識し「エコツーリズム」の定義を示した。エコツーリズムの概念は、1990年代以降、レスポンシブルツーリズムやエシカルツーリズムとも関連しつつ発展した。
 エコツーリズムの思想的背景の一つとして、1981年に発表された「ライオンの経済」という論文がある。これは、野生動物を殺さず、観察・学習によって観光収益を得る方が経済的価値が高いことを指摘し、保護と経済の好循環を可能にする観光の在り方を示した。このような「殺さない観光」は、特に熱帯地域の途上国において自然保護と地域振興を両立させる方法として支持されていった。
 日本では1990年度より、環境庁(当時)が西表国立公園(現・西表石垣国立公園)を対象とするエコツーリズムのパイロットプロジェクトを実施し、ガイドの必要性や地域と連携した運営体制の重要性が明らかになった。これにより屋久島や小笠原でもエコツアーが進展し、1998年には全国組織「エコツーリズム推進協議会(JES。現・(一社)日本エコツーリズム協会)」が設立された。2007年には「エコツーリズム推進法」が議員立法により成立し、日本国内における法的な整備が進められた。
 エコツーリズム推進法におけるエコツーリズムの定義には、「案内または助言」「ふれあい」「知識や理解の深化」が含まれており、ガイドの存在が不可欠とされる。ここで重要となるのが「インタープリテーション」である。これは単なる解説ではなく、自然や文化の価値や意義を伝える専門的手法である。その技術を有する「インタープリター」の育成が求められる。
 インタープリテーションは、19世紀末のアメリカに起源を持ち、1882年に最初のパーク・インタープリターとしてジョージ・ヘンダーソンが雇用された。1954年にはフリーマン・チルデンが「インタープリテーション6つの原則」を発表し、その後インタープリターという職域がナショナルパークサービスにより制度化されている。日本でも1980年代後半から環境教育や自然学校の設立を通じて、インタープリターの育成が進められた。
 海外の先進事例として、ガラパゴス諸島とコスタリカを挙げる。ガラパゴスでは、国家資格を持つナチュラリストガイドが1ガイドにつき最大16人の観光客を担当し、エコツアーガイドをしながら、環境保全を前提とした厳格な観光管理を行っている。コスタリカでは、軍隊を廃止し、国家予算の1/4を環境教育に充て、国立研究機関によるガイド育成と住民雇用を進めてきた。
 以上のように、エコツーリズムは観光の弊害から生まれた理念と仕組みであり、地域振興と環境保全、教育の融合を図るものである。その中心には常に、観光客の学びを支えるインタープリテーションの存在があり、インタープリターという専門職の重要性が増している。今後の観光には、このような価値ある観光体験を提供するための体制整備と人材育成が不可欠である。


ディスカッション

コーディネーター:
   町田怜子 氏(東京農業大学地域環境科学部 教授)
パネリスト :
   海津 ゆりえ 氏
   佐々木 吉昭 氏
   真山 高士 氏(那須町観光協会 理事 /那須高原ビジターセンター長)
   中原 一成 氏
コメンテーター :
   中島 慶二 氏(江戸川大学 特任教授)

1)日本におけるインタープリテーション計画の位置づけについて

  • 日本のインタープリテーション計画は、アメリカのように野外サインなどを含めた様々なビジョンを示す運営管理の上位計画と直接結びついているわけではない。ただし、アメリカのインタープリテーション計画に類似したものが、各国立公園で作られる可能性は十分にある。実際に、那須地域では塩原・日光を含めた広域的なインタープリテーション計画の検討が進められており、こうしたケースではアメリカのモデルと近い性格を持つと言えるかもしれない。また、那須地域単独での地域的なインタープリテーション計画をはじめ、ビジターセンターや宿泊施設などが独自に策定する計画も存在しており、日本では多様な形態のインタープリテーション計画が展開されている状況である。
  • すでに地域のビジョンやストーリーがまとまっているのであれば、名称がインタープリテーション計画でなくても問題はなく、その取り組みを進めていけばよい。一方で、ビジョンやストーリーがまだない地域では、インタープリテーション計画に近い形でビジョンを共有・統一し、関係者間の連携を深めていくことが重要である。なお、最終的にインタープリテーション計画という名前でなくとも、各種計画等にインタープリテーション計画の要素が含まれる形でも問題はない。


2)インタープリテーション計画の策定プロセスについて

  • 那須エリアでは、全4回のワークショップに延べ200人以上が参加し、毎回約60人が集まった。那須地域は移住者が多く、地域愛の強い住民が多いため、地元に貢献したいという想いを持つ人々が集まったと考えられる。特に、地域おこし協力隊やコミュニティFM関係者、観光事業者、行政関係者などの参加が目立ち、毎回約10人の地域おこし関係者が参加したことが特徴である。学生の参加は平日開催のため少なかったが、学校の地域コーディネーターが参加し、教育との接点も得られた。また、地元のアーティストやジュエリー作家など、地域の魅力を表現する人々も多く参加し、インタープリテーション全体計画に使用されたデザインも、地元出身のデザイナーによるものであり、那須の魅力を視覚的に伝える内容となっている。
  • 参加者呼びかけの方法としては、まずは個々の異業種とのつながりや行政の方の紹介によりひたすら声をかけ続けた。回を重ねるごとに参加者が増え、仲間が仲間を呼ぶ形で広がっていった。また、「那須IPチーム」として策定や事務局業務に関わってくれるような深い関係を築けた人も出てきた。このように、断られても声をかけ続けること、仲間が仲間を呼ぶ仕組みを作ること、そして「来る者拒まず、去る者を追う」という姿勢で取り組んだことが、関係性の深化につながった。
  • 那須地域の計画は民間事業者主導で進められたが、作ることが目的ではなく、どう活用していくかが重要だという意識があった。使い方は時代や関わる人によって変化するが、地域のストーリー自体は変わらない。ワークショップを通じて、参加者に「自分ごと」として捉えてもらうことを徹底し、特に新たに参加した人には最初に計画の意図や目的を明確に伝えることを重視した。また、地域の魅力について皆が共通の言葉で語れるようにし、参加者の意識を揃えるためにも、「みんなでやろう」という姿勢を一貫して伝え続けた。
  • 「誰がやるのか」「誰が引っ張るのか」といった点が、雰囲気づくりにおいて最も重要であると考えた。そのため、まずは自らが率先して動き、「自分もやりたい」という人が現れた段階で役割をお願いするなど、主体性を引き出す工夫を行った。自らが担う部分と仲間に任せる部分とのバランスを取り、メリハリを持って進めていった。
  • 環白神においては地域の機運の高まりはこれからである。過去にはエコツーリズム推進協議会において全体構想に至らず挫折した経緯があり、その後の方向性を模索する中で、ユネスコエコパークをはじめとする複数の計画を検討してきた。そうした中で、地域のストーリーや伝えるべき価値を再認識し、インタープリテーションの「見えるものを通じて見えないものを伝える」という本質に魅力を感じてきた。周辺地域にある歴史・風土・文化・自然との共生をいかに伝えていくかを考えたとき、インタープリテーションのストーリーは、むしろそうした課題に適合しやすいのではないかと感じている。行政主導の形式的な計画にとどまらず、地域の想いや状況に応じて柔軟に作り変え、目に見える形で表現していくことに可能性を見出し、現在その実現に向けて取り組んでいる。
  • インタープリテーション計画を策定する際には、ストーリーだけでなく、どこで何を行うか、どの場所を保護するか、望ましい利用方法や避けるべき使い方などを地域住民と共に議論し、空間的に整理していくことも必要。


3)インタープリテーション計画を策定するメリットについて

  • インタープリテーション全体計画をストーリー集としたことで、その活用に関するメリットは3つ挙げられる。第一に、教育面での活用。ストーリー集を通じて、地元の子どもや高校生・学生が地域の魅力を再認識する機会となり、将来的に地元に戻るきっかけや、地域の自然の価値を理解するツールとしての役割を果たしている。実際に、県立高校の特別授業での活用も始まっている。第二に、観光施設での実践的な利用。あるホテルでは改修計画にストーリー集を取り入れようという動きがあり、活用次第で経済的な価値も生み出せる可能性があることが分かった。逆に活用されなければ、単なる資料にとどまってしまうので、具体的な活用事例の蓄積と可視化が重要である。第三に、企業の新人研修における有効性。自社の情報だけでなく、地域への理解を深めた上での接客が求められる現代において、ストーリー集が教育ツールとして活用可能であるという意見が企業から出ている。さらに、アウトドアガイドによる高付加価値ツアーの造成にもつながる可能性があり、地域資源を活用した観光商品づくりにも貢献できる点がメリットとして挙げられる。
  • 白神山地では、世界遺産登録から30年が経過しているが、登録後10年目をピークに観光客数は右肩下がりの状況が続いている。今後はインタープリテーション全体計画を活用し、地域資源を一貫したストーリーとして伝えることが重要であると感じている。同じ体験や食の提供でも、ストーリー性を持たせることで来訪者の理解や満足度の向上につながると考えられ、地域全体の観光価値を高める手段として期待されている。


4)インタープリテーション計画におけるガイドについて

  • ガイド制度に関して、海外では国家資格や法制度的な仕組みが整っている国や地域もあるが、日本にはそのような制度がない。そのため、ガイドの育成やインタープリテーション計画は地域の努力に依存している。奄美や屋久島などの地域では認定制度を持ち、檜原村などでもガイド育成に力を入れているが、認定後の継続的な育成が不足しており、定期的な研修や学びの機会が重要である。そのような機会があれば、多くの人々が参加し、他の人からヒントを得て次に進むことができる。1990年代前半に世界各地でカンファレンスを主催してきたアメリカのアドベンチャー・トラベル・ソサエティのように、雑多な人々が交流できる場を作るような支援が大切だと考えられる。
  • 那須のように、地域住民が主体となる計画づくりは、日本の自然・文化・歴史を活かす上で有効である。一方で、高度な知識やスキルを持つ職業的インタープリターの存在も不可欠であり、その育成と職業としての確立が課題である。
  • ガイドの生計確保は長年の課題だが、アドベンチャーツーリズムの高評価により、目に見えない価値を伝えるガイドの重要性が再認識されている。質の高いガイド育成が求められ、日光国立公園では県が主体となり「日光国立公園認定ガイド制度」が始動している。インタープリテーション全体計画を活用しながら、若手にとって魅力ある職業像の確立を目指している。
  • 地域内に複数の段階やレベルのガイドや伝え手がいることは、地域全体として理想的である。その中で、インタープリテーション全体計画の策定を通じて地域資源を再評価・共有する過程に、認定ガイドが関与し、一員として機能することが重要である。例えば、ガラパゴスやコスタリカのプロガイドは高度な専門性を持ち、地域で「この分野はこの人」と認知されている。日本でも、ガイドは知見を独占するのではなく、代表者として共有・伝達する姿勢を持つべきであり、こうした人材の育成は、地域コミュニティにおける役割分担としても望ましい。
  • 民間事業者は創意工夫で強みを活かし、付加価値を収入に結びつける努力を自ら行うべきであり、その点は基本的に各自に委ねられる。一方、現在各地で進むインタープリテーション全体計画は、地域住民が地域の価値を再認識し、観光客に共通の基本メッセージを伝える点で意義がある。これはエコツーリズムのガイド育成とは性質が異なるため、「質の高いガイド」の育成は、計画とは別の枠組みや国際的知見も活用し進めるべきである。


5)他地域におけるインタープリテーション全体計画策定の取組状況について

  • 現在、国立公園以外でも自主的な計画づくりが進んでおり、地域内でのネットワーク形成や住民の主体的な関わりが計画活用に繋がっている。雲仙や石垣島などでは、住民主導での計画が評価され、地域の再考や次世代への継承にも寄与している。今後もこのようなプロセス重視の動きが広がることが期待される。


(文責:JTBF)